出陣に際して
  • 海軍大尉 塚本太郎命
    昭和二十年一月二十一日
    中部太平洋方面にて戦死
    茨城県稲敷郡龍ヶ崎町出身 二十二歳

父よ、母よ、弟よ、妹よ、そして永い間はぐくんでくれた町よ、学校よ、さようなら。
本当にありがとう。こんな我ままものを、よくもまあほんとうにありがとう。
僕はもっと、もっと、いつまでも皆と一緒に楽しく暮らしたいんだ。愉快に勉強し皆にうんとご恩返しをしなければならないんだ。春は春風が都の空におどり、みんなと川辺に遊んだっけ、夏は氏神様のお祭りだ。神楽ばやしがあふれてる。昔はなつかしいよ。秋になれば、お月見だといってあの崖下に「すすき」を取りにいったね。あそこで、転んだのはだれだったかしら。雪が降り出すとみんな大喜びで外へ出て雪合戦だ。昔はなつかしいなあ。
こうやって皆と愉快にいつまでも暮らしたい。喧嘩したり争ったりしても心の中ではいつでも手を握りあって――然しぼくはこんなにも幸福な家族の一員である前に日本人であることを忘れてはならないと思うんだ。
日本人、日本人、自分の血の中には三千年の間、受け継がれてきた先祖の息吹きが脈打ってるんだ。 (中略)
至尊の御命令である日本人の血が湧く。永遠に栄あれ祖国日本。
みなさんさようなら――元気で征きます。
 昭和十八年十二月十日

(原文のまま)

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