遺 書
  • 陸軍歩兵伍長 福田誠一命
    昭和十四年三月十日
    支那江蘇省山後村附近にて戦死
    広島県安芸郡倉橋島村出身 二十五歳

弟進へ
進よ、兄は戰争に行く二度と会ふ事は出来ぬ、進よ、兄が戰死と聞いたなら内の責任は君の双肩にあり、父母によく仕へ立派な人間になって呉れ、兄の墓を建てゝ呉れ、兄が最後の願ひだ、君は生活に苦しむと言ふ事は無いと思ふが立派に暮して呉れ、何事も打勝つと言う事だ、父母を頼む、これから社会へ立つのだ、一歩一歩進み行けよ。
妹富美子へ
富美子よ、君は勝氣なるが故に兄は心配をする、女の道は只實直に進むのだ、君の今の病氣に負けてはならぬ、恋愛に落ちるので無い、今君の責任は大である、君故にお父さんは心痛して居る、何事も父に打明けて相談せよ、わからぬ父では無い、早く病氣を治して良い家に嫁いて呉れ、君の顔を一目見たいが会はずに兄は征く、君の花嫁姿は何処かの地下で手をたゝいて嬉んで見て居る。

(原文のまま)

閉じる