遺 書
  • 陸軍伍長 茶谷 武命
    昭和二十年四月二十三日
    フィリピン群島ルソン島
    タクボにて戦死
    神奈川県足柄下郡温泉村出身
    二十三歳

 武モタウ(*繰返し)オ役ニ立ツ時ガ参リマシタ。生ヲ稟ケテ二十余年、唯ノ一度モオ心ヲ安マセルコトナク過シテ来タコトヲオワビ致シマス。今ノ私ノ氣持ハ吉田松陰先生ノ「親思フ心ニ勝ル親心今日ノ訪レ何トキクラン」ト歌ハレタ氣持ソノマヽデアリマス。今思ヒマスニ人一倍子ボンノウノ父上ニトッテ、コレヲヨマレレバドンナデアルカハ、ヨシ全部デナクテモオシハカルコトガ出来マス、デモ此ノ皇國危急秋私達ノ涙ハカクサレネバナリマセン。私ノ肉体ハコヽデ朽ツルトモ、私達ノ後ヲ私達ノ屍ヲノリコエテ私達ヲ礎トシテ立チ上ッテクル第二ノ國民ノコトヲ思ヘバ、又之等ノ人々ノ中ニ私達ノ赤キ血潮ガウケツガレテヰルト思ヘバ、決シテ私達ノ死モナゲクニハアタラナイト思ヒマス。
 日本ニ生レタ者ノミニ許サレル永遠ノ生ニ生キルトイフコトガイヘルノデス。
 之等ノ事ヲ思ヘバ私達ハ涙ヲ流ス前ニ故國ノ勝利ヲ、天壌無窮ヲ祈ラネバナリマセン。ドウゾ私ノコトヲ笑ッテホメテ下サイ、武モ笑ッテ散リマス、デハ父上母上オ身体ヲ大切ニシテ下サイ。
 サヨウナラ
                武ヨリ

(原文のまま)

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