遺 書
  • 海軍少佐 古谷眞二命
    昭和二十年五月十一日
    海軍第十三期飛行科予備学生
    攻撃第七〇八飛行隊
    南西諸島にて戦死
    東京都京橋区槙町出身
    二十三歳

 皇國の一男子として生を享けて以来二十有余年、國を挙げての聖戦に勇躍征く事を得ば男子の本懐、正に之に過ぐるものなし(中略)
過去二十何年かの間、陰に陽に愛しまれたる御両親の恩、甚だ深くして、浅学非才なる小生にしては御礼の言葉も見当らず、その深遠厚大なるに対し深く(*繰り返し)厚く(*繰り返し)御礼申し上ぐるものなり。
 御両親はもとより小生が大なる武勇を為すより身体を毀傷せずして無事帰還の譽を擔はんこと、朝な夕なに神佛に懇願すべくは之親子の情にして当然也、不肖自分としても亦、身を安んじ健康に留意し、目出度く帰還の後、孝養を盡くしたきは念願なれども、蓋し、時局は総てを超越せる如く重大にして徒に一命を計らん事を望むを許されざる現状に在り。
 大君に対し奉り忠義の誠を至さんことこそ、正にそれ孝なりと決し、すべて一身上の事を忘れ、後顧の憂なく干戈を執らんの覚悟なり、幸ひ弟妹多く兄としてのつとめは果せざるを遺憾とは思ひつゝも願はくは之等弟妹に父母の孝養を依頼したき心切なり。
 死すること、強ち忠義とは考へざるも、自分は死を賭して征く、必ず死ぬの覚悟で征く、萬事頼む          眞二

 十八年六月十日 箱根小涌谷にてしたゝむ

(原文のまま)

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