お母さんの夢を見ました
  • 海軍二等兵曹 池田顯雄命
    昭和十七年十月十八日
    ソロモン群島にて戦死
    大阪府大阪市東淀川区出身
    二十四歳

何時とどくか知れんと思ふとなんとなく淋しい様な氣がするのですが、それでゐてかうして書いて見たくなるところを見ると、思ひを馳せてゐる日本の空がこんな柄にもない感傷を起させるのだと自分ながらをかしい様なそれでゐてしみじみした変な氣持になります。戰争といふものが單なる生命のやりとりである場面を想像してゐた事もありましたが、何度か爆彈の中をくぐり彈丸の中をくぐった今に於て死することよりも尊いものがやっぱりあるのだ。生命のやりとりと云ふ當面の問題以上にその生と死の境から湧いてくる意志といふのか、感激といふのか、その様な中で、自分の瞬間の生がたとへ様もなく尊いものに思はれて来ました。
?俺の使命?なんて、大きな事も言へる柄でもないのですが、それでもあと僅かになって来たこの生活の終止符を最も意義深く戰ひ抜きたいと思ひます。
随分皆様方には御無沙汰をしてゐます。しかしこの様なわけですから許して頂くより他に仕方がありません。私は至極朗らかに元氣でハリキッて頑張って居りますから御安心下さい。(中略)
今朝方でしたか五分位うとうとしてゐるうちに母上様の夢を見ました、それで今日一日中うれしくてたまりませんでした。
皆様方の御健康をはるかお祈りして筆を擱きます。               池 田 顯雄

父上様 皆様へ

(原文のまま)

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