遺 書
  • 海軍大尉 松枝義久命
    昭和二十年二月二十日
    比島 コレヒドール沖にて戦死
    福岡県出身 二十四歳

生ヲ皇国ニ享ケ天恵洽(あまね)クシテ楽々悠々タル二十有余年
君恩ノ宏遠深厚ナル一死以テ酬イントシテ余リアルモノニ候
義久斯(ここ)ニ大任ヲ拝シ恐懼感激措(お)ク處ナク唯々身ノ光榮ニ戦(おのの)クモノニ候
一髪尚軽ク君命ノ重ナル今日程痛感セル事ハ御座ナク候
身更ニ生還ヲ期セズ 親ニ先立ツ不幸ノ罪何卒御許シ下サレ度候
鶴脚ノ如ク細キ赤坊ニ米汁トギスマシテ含マセラレ或ハ病魔ノ拂(はら)ヒニ時ヲ屡(しばしば)シテ御両親様ニハ幾度カ御心配ヲオカケ申候
義久今日ノ姿誠ニ御両親様ノ賜ニ候
兄上様姉上様弟妹ニ対シ我生涯ノ恩ヲ謝スルト共ニ小生ニ代リテ忠孝ヨク致サルベク御願仕候
此ノ度ノ戦争ハ百年戦争ニ候ヘバ忠ヲ楠氏ニ比シ孝ヲ尊徳ニ比サルベク候
永ラク御付合ヒ下サレタ皆々様ニ対シ宜敷ク御伝ヘ下サレ度 尚若キ可愛ユキ数百ノ部下ノ御遺族ニ対シマシテハ誠ニ気ノ毒ニ候ヘバ小生ニ代リテ深ク謝シ下サレ度候
最後ニ謹ンデ大日本帝国ノ萬歳ヲ御祈リ申上候

  昭和十九年十月                 義久

御両親様

たのしみは 彼方の空の紅を たゞ一すぢに 思ひ込むとき

(原文のまま)

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