生還もとより期せず
  • 陸軍中尉  森脇誠次郎命
    昭和二十年四月十二日
    沖縄島方面にて戦死
    静岡県浜名郡長上村出身  二十三歳

御両親様
永き間の御恩に、報ずるの秋(とき)至り候(そうろう)。
誠次郎は今、一身を以て御国の興廃を担(にな)ふの重任に喜びつつ、攻撃に赴く可(べ)く候。
神機到来迄はと忍びつつ、ありし日の無念さを今こそ晴すべく候。
先輩逝き、同期生逝くを我一人残りたるの淋しさ比するものなく、今日はその仇討(あだうち)に力一杯の奮闘を期し居り候。
生れしより憧れ候、大空に行くの光栄、之(これ)に過ぐるもの無く、浜松の空に育まれし幸福無上のものに御座(ござ)候。
我儘(わがまま)のみ申し 真に不孝のみ致し、更に先立ちて逝くの事申訳無く候共、御国の守として悠久の大義に生くるを信じ居り候間、御許被下度(くだされたく)候。
生還もとより期せず。仮令(たとい)、身は南海の涯(はて)に散るとも、七度(ななたび)生れて寇敵(こうてき)を討たん決意に燃え居り候。
幼時より御世話に相成り候人々に、よろしく御伝被下度、願上候。
兄の如く思ふ先輩と共に、此の栄(はえ)ある攻撃に臨(のぞ)むを、此の上無き喜と存じ居り候。
勇みて出撃仕り候。
                                                  謹 言

                                                誠 次 郎

(原文のまま)

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