遺   書
  • 陸軍兵長  岡 敏雄命
      昭和二十年六月九日
      比島ミンダナオ島にて戦死
      岡山県児島郡下津井町出身 二十八歳

此度の戦斗にて大君の御為に死所を得ました事は、皇国に生を享(う)くる男子としての本懐、正に之(これ)に過ぎるものはありません。
成人するに及び故郷を遠く離れ、親子別々の生活致し、何等孝養らしき事も尽さず死するは、全く慙愧(ざんき)の極(きわみ)であります。
小生亡き後は前途多端の一家の為、万全の善後策を講じて下さる可(べ)く、切に御願ひ致します。
尚、京子の件に関しても、結婚後僅々(きんきん)四ヶ月余日の生活にて、夫を失ふ身は誠に不憫(ふびん)とは考へますが、出征前能(よ)く能く申聞かせ、既に覚悟の程も出来居る事と存じますれば、今後は本人とも充分御相談の上、宜敷御取計らひ下さいます様、御願ひ致す次第で御座居ます。
小生身は仮令(たとい)何れの地にて果(はて)ませうとも、皇国の万代(ばんだい)不易(ふえき)と一家の隆盛を祈って安けく冥(めい)じます。
最後に、父上の英霊に続いた子として不肖の身でありましたが、何卒御許しの程願ひます。
では、御身体呉々も御大切に。
母上の御幸福を蔭乍ら御祈り致します。
    昭和十九年四月二十九日
                                               岡  敏 雄
  御 母 上 様

(原文のまま)

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