遺言状
  • 陸軍伍長 辻本孝一命
    昭和二十年十一月三十日
    ソ連シベリヤハバロフスク州
    コムソモリスク収容所にて戦病死
    大阪府大阪市浪速区出身 二十三歳

本日、遂に此の書が開かれた。
小生は入営兼出陣の際より、生還を期せず。先づ、父上様始め皆様の御恩を謝す。
出陣の時より、家の生活に付ひては少しも気に掛けず、皆、初子、父上様に御委託済の事。
修二も軍属にて何処に有りや不明。家の事は、父上様に修二に宜敷き様、取計って頂き度い。
初子もよき人妻になる様。良一もしっかり勉強して、よき日本人になってくれ。
そして、皆力を合せ、父上様を助け、よき家庭を建設してくれ。家の心配事は自分等にて片付けず、宜敷く親族の方に御相談する様、小生よりも宜敷く別書に書いてある。
そして、家族一体幸福、安全を期して頂き度い。
修二よ。初子よ。花子よ。良一よ。
皆、皆、力を合せて父上を助け、大日本帝国の為、頑張ってくれ。
父上様にも充分身体に気を付けられ、楽しく余生を御過し下さい。

                                     以上

  昭和十九年三月
     入営、出発に際して
                                    孝 一
   父上様
   修二
   初子
   花子
   良一                          

(原文のまま)

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