可愛い妹へ
  • 海軍飛行兵曹長 三上春治命
    昭和十九年十月十二日
    台湾にて戦死
    島根県邑智郡口羽村出身 
    二十二歳

安ちゃん、懐かしい御便り有難たう。
元気で産業戦士として踏み出した由、兄さんは心から祝福してやる。元来勝気な安ちゃんだから、少々の苦しい事辛いこと位、我慢して御国の為に働くものと確信してゐる。
同封の金はほんのわずかだが、兄さんの心尽しの御祝と思って受取って呉れ。どんな困難なことにぶつかっても、若さと意気で押通す。くよく考へたり嫌だと終始思ってやってゐると、仕事に負けてしまふ。
我々日本国民は、皇国(すめらみくに)に生を承ける喜びと誇りを持って、喜んで難事に当たって行け。環境が変って窮屈なこと、やりにくいこと、又、急に親の下(もと)を離れて淋みしい心等、邪魔する目に見へない敵はあるけれど、安ちゃんも三上家の子だ。
兄さん達三人共、立派に軍人として御奉公してゐるのだ。女でも兄達に、なに負けるものかと云ふ旺盛なる負けじ魂で掛って行け。
日本人である以上決して忘れていけない大君の御恩、そして父母の恩、いくら忙しくとも年老いてゐる父母は、口羽の土地から常に安ちゃんのことを心配して居られると謂ふことを忘れず、余暇を利用して家に便りを出せ。(中 略)

戦野の兄二人は、元気で居られるから安心してやれ。兄さんも、今では可愛い雛鷲の教育で忙しいが、至極元気だ。呉々も注意するが、自分の体を傷つけたら、之は大きな国家への不忠だから、充分気をつけて作業に当れ。仕事にやうやく馴れる時、心に大きな隙(すき)が出来る。大いに自重してやれ。
末筆だが安ちゃんの健斗を祈る。

可愛い妹へ

三重県鈴鹿海軍航空隊
第十二分隊教員室 兄より

(原文のまま)

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