愛する成子よさらば
  • 陸軍少尉 齋藤 良雄 命
    昭和二十年五月二日
    中華民国湖南省にて戦死
    青森県北津軽郡嘉瀬村出身 
    三十六歳

明日出征にあたり一言す。
皇国未曾有の難局に処し、父は明日出征す。もとより男子の本懐
平素の覚悟なり。
(中略)
成子よ、父がなくとも決して悲観をするな。他人を羨むな。
父は必ずお前たちの側に居るのだ。お前たちを守ってゐるのだ。
もし淋しかつたら父の名を呼べ、必ず父はお前の心に答へるであらう。
もし父と会ひたくば、靖国神社の社前に来たれ。父は必ず生きてゐる。
決して淋しがつてはならぬ。
強く正しく清く、而(しか)も女は優しく生きてゆくことだ。父はお前達の成長
をどこかで守つてゐるのだ。決して心配するな。
(中略)
たとへ貧しくとも明朗に幸福に生活せよ。
母に良く仕へ、祖母に父に代はり孝養を尽くせ。
(中略)
別れるにあたり、言ひたいことは沢山あるが、要は立派に生きてゆくことだ。
決して父のないことを悲観するな。
愛する成子よさらば。
健康と幸福を祈る。
 
昭和十九年七月十六日
                                          父 良雄
成子殿

(原文のまま)

閉じる